数週間前に必要があって購入したのがEPSONのGT-X830というフラットヘッドスキャナー。価格コムでの評判は現在のところあまりよくないのだが、試しに身近にあるものをいろいろスキャンしてみて、かなり満足している。昨年末に発売された最新機種で同時発売のGT-X980より下位に位置づけられる高画質スキャナーである。購入機種の評判がいま一つなのは以前のモデルから機能があまり変わっていないためだ。光源がLEDに代わり、搭載センサーがα-Hyper CCD II オンチップマイクロレンズ付12ラインカラーCCD(R/G/B×4ライン)になった。上位機種はフィルムスキャン機能が優れているが、そうした利用は少ないため、GT-830を買うことになった。

ペーパーレス化の影響で、最近はなるべくコピーもとらずにほとんど印刷はしなくなっていたので、HPの複合機もしまったままになっていた。HPのスキャナをしばらくTWAIN接続でスキャンしてみたのだが、低速なのと解像度に問題があることからどうしようかと悩んでいた。そんなとき、先日知人のところでEPSONの複合機でスキャンをしてみたら、付属ソフトのEPSON Scanでの読み取りがかなりよかったのに驚かされた。これが購入に至った経緯である。

では、さっそくスキャナーの実力の程を検証してみよう。

子供たちの遊び兵隊ごっこ_補正比較

ということで、手元にある図録で、かなり古いゴヤ展から子供たちの遊びの様子を描いたシリーズの一枚を試しに1200dpiでスキャンしてみた。この記事の冒頭にある絵の左側を拡大している。1200dpiだと速度的にも早く、気軽に使える。図録だとオフセット印刷で網掛けがしてあるので、上図のように網点がよく見える。スキャナーソフトにもdigital ICEなど自動ゴミ取り機能があるが、あまり評判がない。スキャンそのままでも、遠めに見ると雰囲気としては水彩のような質感にも見えるが、網点を除去するために、 Photoshopでダスト&スクラッチやぼかし(ガウス)をかける。その分だけ画像はぼやけてしまうが、ゴヤの油絵の質感が甦ることになる。

簡単だが検証したところで、フラットヘッド再び、と適当なタイトルで記事を書き始めてみた。イーヴリン・ウォーの『ブラッツヘッド再び』から思いついたタイトルだが、ちょうどGyaoでグラナダのテレビドラマを配信していたのでちょっと見てみたら、第一回が「Et In Argo Arcadia」というタイトルだった。ニコラ・プッサンの「アルカディアの牧人たち」で墓碑に書かれた謎の文字だ。

ということで、追加にもう一枚の画像を追加しておくことにしよう。これが「アルカディアの牧人たち」だ。

アルカディアの牧人たち

画像だとわかりにくいが、二人が指さしているあたりに文字は書かれている。これもついでに画集からスキャンしてみたものだが、空の部分の汚れがひどいのが不満だった。だがよく考えてみると、画集が悪いとかスキャナーの性能が悪いという問題ではなく、マネの笛を吹く少年の謎(外部リンク)と同じで、最近の修復の影響なのかもしれないと考え始めた。調べればわかることかもしれないが、日本語だと情報がなかった。ルーブル美術館所蔵の有名作品だから修復の情報もあるはずだ。思い出したら、そのうちに調べることにしよう。パブリック・ドメインでさまざまな画像が今後大量に現れるだろうが、撮影の時期によって絵画が修復後か修復前かというのがわかってくる。また、撮影画像からスキャンされ、さらに加工ソフトによる編集、本来はあったはずの汚れや損傷が削除されるなど、さまざまな遍歴をたどる場合もあるかもしれない。あるいは、そうした遍歴がある場合もあれば、修正を受けないままに放置されているケースもあるだろう。

ちなみに謎の文字とは「我はアルカディアにもあり」という謎の言葉で、一般的な解釈では、理想郷アルカディアにも死があると言って、墓石の言葉が牧人たちを驚かせている。パブリック・ドメインの画像の中でも、墓石は無体物としてやはり死は存在すると呟き続けているのだ。